2010年09月07日

読書雑感5冊

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●危険がいっぱい デイ・キーン

サスペンスといえばそうなのだが
最初はストーリーより主人公マークの
ミセス・ヒルに対する妄想的な執着が中心だったように思える。
愛や憧れというよりは激しく劣情を刺激されているといった描写。
視線もねっとりと絡みつくようだ。
(正直な男性目線というのはこういうものかもしれないが)

最後の解説を読んだらデイ・キーンという人は
本来そういう性的な描き方を得意とするらしい。
ふーむ。

前に読んだ「ハズバンド」はそうした性の描写がなかったが
そっちのほうが珍しいらしい。

前半中だるみがあるが
後半からの展開が速い。急激に転がる
これも彼の特徴かもしれない。

マークを追っているはずの義兄がいつ現れるかと思えば
そういう形とは。。。

んでマークという主人公は
どうにもおめでたいというか気障で計算高く自惚れ強く
なかなか感情移入しにくい男なのだ。

するする読めたが感想は「オチのあるコント」のようでもあった。

訳は松本依子さん。いつも年賀状を下さいます。
妄想的セクシー描写は大変だったろうと推察します。



●真綿荘の住人たち 島本理生

島本理生の本も考えたらかなり読んでいる。
瑞々しい感性と心理描写が魅力。若さゆえか少しとんがったとこも感じる。

彼女の本質は生真面目なのだろう
「不倫には共感できない」という意思を持っていることも明らかにしながら
最近はかなりいろんな試みをしている。
生真面目さは自分で認めた上で
作品で生を受ける登場人物達が繰り出す「アンモラル」に果敢に挑んでいると感じる。

最新刊では「不倫」を扱っているが
その少し前の作品がこれであろう。

これ「めぞん一刻」のシリアスバージョンのような。
唯一「のほほん」とした大和くんがいるから
空気が軽くなっているが
二組のアブノーマルな関係のカップルは不思議な関わりを続けている。
ずっしり影を落としているのは妙齢女性2人のそれぞれの過去だったりする。

全員が自分の生きる道を選んで踏み出すラストは
意外に「人生いろいろ」と思えるほどスカッとしている。



●日常の非常口 アーサー・ビナード

作者アメリカの方だが
日本に住み、日本語でこの本を書いている。
著者紹介によれば、数冊の本を出したりラジオのパーソナリティーもしているようで
本当に軽妙な語り口で面白い。一気にファンになった程だ。

「日本人の知らない日本語」「ダーリンは外国人」がヒットして
外国人からの視点に注目が集まっているが

このビナード氏も
日本人が普段気づかないような「外からの視点」
ときに感覚的に、ときに論理的
日本ならではの言い回しや慣習、生活全般への疑問に
斬り込んで、「はっ」とさせてくれ、すっきりさせてくれる。

理解するまでとことん突き詰め、少し不本意な結果であろうと
彼なりに納得してアメリカンジョークを交えながら柔軟に懐に収める
かなりの器とウィットを感じる。

そしてとことんお茶目

落ちた若葉マークと紅葉マークを
集めているとこも不思議だし

子供たちの(外国人とみると)「ハロー」に答えると
「ハロー」「ハロー」と一斉にハローの嵐になるので
ハローは危険だなあ〜(苦笑)」と感じ…
そんなときにテレビから流れる言葉
「ハロー(波浪)注意報」というを聴くのが面白くて好きだったとか。

日本には「○度」という言葉が多く
速度、温度、震度、もう一度…など
新鮮で面白く感じたが
成人誌で
「興奮度」「期待度」「淫ら度」「エロ度」…乱発されるのを見て
「○度」に飽きたらしい。

日本の若者と同じように
どこへ行っても見る「月極駐車場」の「月極」という
見慣れない言葉にとまどい
「げっきょく」と辞書を引いても出ない。
頭を抱えて悩んだあげく
全国規模の大会社「月極」なんだろう…と考えたり。

彼の頭の中で
疑問→調査→判明→更新
を続けていくうちに
どんどん彼自身日本人化していく

反戦についてもそうで
アメリカの姿勢をシビアに否定している。

日本の郵政民営化は
官→民に移るということで
「自分達市民のことか」と思わせ
実は市民から遠い「大資本の民営企業」のことだ。
言葉のすり替え、まやかしだと厳しい指摘もする。

でも全体的に
センスのよい小噺の宝箱みたいな素敵なまとまり
また彼のイラストもシュールだが愛があってすばらしい(表紙も)



●目からハム 田丸久美子

まず衝撃的だったのはこのタイトル。
何かふざけてつけたタイトルかと思えば

イタリア人にとっては
「目からウロコ」ではなく「目からハム」というらしい。

イタリア人に精通している通訳の田丸さん
若い娘時代イタリア男の
「若い女性とみればいつでもどこでも…自分に妻子がいようと
とにかく口説く」

という国民性と言おうか、猛烈な誘いに苦労したらしい。

若い娘というだけでイタリアでは
引く手あまたらしい。
どこまでも追いかける姿勢はすごい。
さすがジローラモを産んだ国だ。

そう、私はかねてより
どんな部門でも
国際的な各国代表者のやりとりの場面において
通訳こそが政治家にも似た
大きな実権を握っているのではないかと感じていた。

それは一部の局面では本当に真実であったようだ。
通訳のさじ加減で展開が大きく動くことはあるという。

通訳は技術だけでなく
深い読解力→その場に応じた変換
という「機転」と「思いやり」「分別」に長けた人物でなければできない。
人間的に未熟だと円滑に行くべき話し合いも座礁させてしまう。

各国と各国の架け橋
片方の国には存在しない言葉のニュアンスまで伝えることもあれば
伝え過ぎてはいけない言葉もある。

意思の疎通ができないことを通訳のせいにされた通訳仲間
「通訳を変えろ!」と言われて
それをその人はきっちり通訳していた
…そんな情けなさや屈辱といった苦労話も沢山。

イタリアは通訳激戦区というくらい通訳人気があるが
同時通訳は希少らしい。

イタリアでは人生のうちでも
食べる(マンジャーレ)
歌う(カンターレ)
愛する(アマーレ)

を大切に生きているという。

それを聞くとほんとに素敵だと思う。私が住んで馴染むかどうかは別にして。


印象的なエピソードは

若い娘時代の田丸さん
イタリア企業が日本旅行したときの
同時通訳兼バスガイドもしていたという。

そのときは2台のバスで観光。
Aのバスに田丸さん
Bのバスに男性通訳兼ガイド

イタリア企業の人達は男性ばかりだったので
いつのまにかBのバスの男性客が
Aのバスに無理に乗り込み
ぎっしり男性達がひしめいてしまい
Bのバスはガラガラになったらしい。
それがショックでBのバスの通訳クンは自信をなくしてしまった…
という。

そしてその観光中
田丸さんが何を言っても視線は体に張り付いていたという。
「どこがよかったですか」と訊いても
「君のお尻ばかり見てたよ」というイタリア人ばかりだったと。

なんともおめでたい国民性(男性が…)

この本のおかげでかなりイタリア人の気質わかった気がする。

そして…ちょいメモ
お菓子「柿の種」はイタリア人たちに
「どこで買えるのか」とかなり受けたらしい。



●肉体と読書 赤坂真理

これも「何?このタイトルは」と思った。
中身はコラム、あるいは詩のようなモノローグ
そして
とにかく気持ちいいくらいの断定で
逃げがないダンディズム。

ところどころに挟まれているピンナップガールの写真
刹那的であり、戦争の影を落としている。

人の絆、民族間の思想、この人は常に頭を巡らせている。

女性しか持ち得ない皮膚感覚を研ぎ澄ませ
そのあとでぶわっと視界を広くして
男性的ロジックまで昇華させるその知性にしびれる。

あるときは小泉首相がブッシュと会ったときに着た
ラルフローレンの青いシャツ
その背景にあるものを切り取って見せ小泉批判もする。

あるときは
戦場におけるマリリンモンローの存在に思いを馳せる。

ある時期のあゆを
脆さを高密度に練り上げたような強度」があって好きだったと語る。

読破してみて初めて
「あ…肉体と読書!なるほど」と思う。

山田詠美などを思わせるダイナミックな女性…赤坂さんの(見た目は一青窈みたいだが)

セクシーなダンディズムに溢れたコラム。
posted by 彩賀ゆう at 01:21| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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