2010年04月09日

読書雑感5冊

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●銀河不動産の超越 森博嗣

なんかあっちゅうまに読んでしまった。

主人公高橋君は平凡過ぎて欲もない人間なのだが
次々と出くわす人物と交流せざるをえない状況に。
数奇な運命に翻弄
されてしまう。

しかし
それさえも苦にしないのが彼の才能。

多分どう転んでも誰も責めないんだろう高橋君。

最終的には絵に描いたような穏やかな幸せがそこに。

流れに身を任せるというのも幸せだ。
宇宙的な展開も期待したが…

広陵とした住処という宇宙で遭遇する異星人
すべて受け入れる高橋君…ちゅうことで
彼のキャパが宇宙なんだねきっと。



●めんどくさがり屋さんの収納術 板垣康子

なかなか親切。

めんどくさがり…すなわち「気が急いてる」ってことで

そこにもこの本はちゃんと対応してくれている。

ここは四角四面にしなくていいのよ…ここはこうで」という

そんな優しさもあるし

『はっ!』とさせられることも多くある。

「こうしなきゃ」という神経質な人が書いた
ストレスを増やす本は収納術本にも多いが

…そこがゆるいのがリアルに生活に根ざしていて
とってもいいと思う。



●時にはうどんのように 椎名誠

椎名誠、結婚してても
モンゴルで何か月も暮らしてしまうくらいの自由人だ。

かといって奥さん人質に取られたりしたら
すごいナギナタ持ってかけつけるかもしれん…
と思えるヒーロー的な色気も持ち合わせている。多分。

この本は椎名のつぶやきみたいな本だけど

極端に無頼な印象の椎名が
宴会が『高級料亭だった!!』と「ジーンズに裸足」という
自分の格好をいきなり恥じたりして
慌てまくって
ぎりぎりまで色々と努力するが
結局…時間切れでそれで通したりするんだ。これが。

宴会に居合わせた人は「いつもの椎名」と思うに違いないが
そんなワイルドで無頼派に見える椎名が
案外小市民なとこがおかしい。

ちょっとした表彰式で慌ててスーツを買おうとして
百貨店に入れず量販店で買ったり…

そんなんなんだあ椎名誠。ぷぷ。


●ブラザー・サン シスター・ムーン 恩田陸

男2人と女1人3人3様の生き方感じ方が描かれているが
最初こそ重なり合ってた3人は

それぞれのクリエイティビティによって
感性、そして人生の指針などを得て違う方向へ進んでいく。

3つの角度…
それもちょうど大学生という悶々とした時期であり
言葉の一欠けらも瑞々しい。

「ものを作ろう」という感性で合致する心の一部もあるが
感じ方の相違や
「自分が何者であるのか」という個々の自意識によって
それらは寄り添わない。

だけど「印象的なできごと…そして映画」は
やはりその3人の中で違う煌きを持って生きている。


●おばさん未満 酒井順子

うーん。凄いタイトル。

酒井順子さんの本は殆ど読んでいるのでこれも多分通り道。

しかし順子さんも43歳になり考えるところは増えている。

彼女の物凄い細かく説得力ある分析が好きだ。

そして図書館司書のように…
新たな情報でも「これはココ」と
さっと的確に分類してしまう

それが気持ちよく、
そして私のどこかで彼女の客観性が
生きるヒント」になっているともいえる。

彼女はたまに物凄い毒を吐いたり
また物凄いシモネタを書いたりするが
何やら気品のようなものが漂うのも素敵だ。

この「おばさん未満」は
表紙の水森亜土ちゃんのかわゆい絵にも惹かれたが
読み込んでみると
今の酒井さんの状況…「負け犬の遠吠え」を書いたときの彼女とは
また違っているのだ。
「子育てが終わった友達」とも友達関係を復活できるのは
今だからこそ!!てなことも書いているし
(以前は『生き方が違うから感じ方も』という距離の置き方だった)

遅くに結婚したお兄さんの子供達も大きくなっていて
(その昔は『酒井家を途絶えさせてごめん』的なことも書いてた)
肩肘張らずいい具合に「ストン」としてきている。

最近「しがみつかない生き方」っての
香山リカが書いたが
同じ分析型だけど
似てて非なるのが酒井順子

酒井順子の「客観的」でいながら
さめた頭の一部で大笑いしているとこがイイと思うんだなあ。
それも「笑え」ってんじゃなく
ガッツリ「ひとり笑い」のようなとこが。

ま、今後も切れ味鋭い文章を楽しみたいです。
posted by 彩賀ゆう at 18:38| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月18日

読書雑感5冊

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また少し前に読んだ本の雑感など。

●『狂乱西葛飾西日記20世紀remix』 大森望

これは大森先生の交遊録で

SF作家やミステリー作家など膨大な数の交友が楽しめます。

あの京極先生が「残酷な天使のテーゼ」歌うらしいですよ〜!

まあ、その中でも「SF」というカテゴリが最近は揺らいでいる…
というような興味深い話もあり
SFに分類される作品は確かにあれど
作者の方でもSFというカテゴライズを望まず
世間もSFというカテゴリに大きな偏見があるようだという。
いつか
もっとふさわしく新しい言葉ができるのかもしれない。


●『巷は勘違いに満ちている』 松崎菊也

これはびっくり
コラムだが作者のことも知らず
なんとなく読み進めたら
松崎菊也さんは大分出身ザ・ニュースペーパー
初期からのメンバーということが判明。

大分の悪いとこを滅多打ちにしつつ
故郷愛の深さも感じさせる。
60代とは思えないパワフルな感性とアナーキズムにひれ伏しました。


●『宇宙飛行士になった子どもたち』 杉山由美子

これは特に向井千秋さんと母親のお話は泣けるのであるが
「宇宙飛行士」という数名の選ばれたエリート
その子供時代のピュアさと親との関係性

(特に親が子供を子供扱いしてない、一個の人間と見ている)

皆自然が好きでのびのびしている。
その中で勉学を苦行と捉えず
きっと「可能性を形にするもの」と楽しく考え
壮大な夢の実現を果たしたのだ。

子供達は不思議と
居間や廊下で…しかも みかん箱の上で勉強しつついい点をとるのだった。

唸りますね〜。

最後に参考書のようにこの母親のココがいいと
わざわざ集めている解説がありますが
それは余計だと思います。

●『ひとつ上のアイディア。』 眞木準
それぞれアイディアを仕事にして成功している達人なので
タイトルや文章までやはり独特である。
逆説を使ってどきっとさせたりもする。
そしてやはり視点が鋭い。
ある場面では柔軟、ある場面では頑固
有名なCMなどの誕生秘話も聞ける。
少しのズレで成功か失敗かも分かれる。
本当に勉強になる。

●『グラスホッパー』 伊坂幸太郎

「死神の精度」と「重力ピエロ」は映画で観たが
この伊坂氏の文章を読んだことがなかったのでどきどきしつつ読んでみた。

この伊坂氏
興味深いシチュエーション」を作るのが天才的だと思えた。
3者3つの角度から物語が展開され
全てきな臭いのだがぐんぐん引き込まれる
多分そのシチュエーションの妙に立会いたい欲を刺激するからだ。

そして映像化を最初から頭に入れているかのような
ぐるっと360度破綻のない緻密な描写。
静かで深い闇を感じるが少しばかり救いがある」それが伊坂作品の空気だと思う。
posted by 彩賀ゆう at 19:55| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年02月27日

読書雑感6冊

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少し前に読んだ本の雑感など。

●『マイナス・ゼロ』 広瀬正

この本は
私の好きな「タイムスリップもの」ということを
随分前に聞いていたので気になっていたがようやく会えた。

タイムマシンは出てくるが
時代を跨いで、それぞれの人生がみっちり描かれ
俊夫と啓子の数奇な運命が次第に紐解かれていく。
ゆっくりと核心に迫っていく緊張
ガーンと頭を殴られたような衝撃を覚えた
一見古風な物語の中でタイムパラドックスのいびつさが
際立って素晴らしく震えた。


●『世界クッキー』川上未映子

この人の文体は、エッセイですら呼吸をするような…
細胞の奥で書いているような感すらある。
だが絶対的に女性のリズムだという気はする。
彼女はその文体で
その時々のとるに足らないとこから派生した昂ぶる思いや
過去に置き去りにした生温かい感傷を
つぶさに脈絡なく語ってくれる。

そのとりとめもなさが
兼好の
あやしうこそものくるほしけれ」という言葉さえ思い出させるほどだ。
彼女の細胞からの吐露を聞くような文章。
少し読むだけで
うっかりすごく親密になったような錯覚をしてしまうのも
彼女の人気が美人だけにとどまらない理由だろう。


●『知恵熱』池松絵美

なんとなく面白そうで手にとったが、
後々辛酸なめ子氏の本名だったと気づいた。

まさに中二病というか
女子中学生と女子高生のそれぞれの
頭でっかちだとか…世を拗ねてるだとか…
感化され易いだとか…異性への興味だとか…
このリアルなまでの感情の動きや関係性の変化
天才的…というのか彼女自身が
いまだに少女の心を持っているのか。

そう少女って綺麗なものとか無垢なものではなく
かなり残酷で身も蓋もない生き物なのです。

●『知りたがり屋の猫』 林真理子

この人に
男女にまつわる裏のドロッとした感情や
同性に対する僻み嫉み恨みなど
書かれると毎度毎度巧くて唸る。
起承転結転結くらいのしつこさやボロボロに堕ちていく様とかも。
たまに読みたくなる。

長編だと思ってたら短編集だった。
そしてこの中の終わりの方の短編は真理子ぽくなく
さらっと終わっているものが幾つかあって新鮮だった。

最近も真理子節っていうのかなよく出てくる
「男が自分の名を呼び髪を撫でる…その時間のなんと甘美なことか」
的な文章とか。こういうスタイル変えないよね。

押し付けがましさもあるけどすぐ彼女の文章ってわかる。
ここまで来ると独自性の確立でアッパレ。

林真理子の
聖家族のランチ」はとにかく恐怖だった。あんな凄い展開とはね。
しばらく食欲を失った。

●『お母さんという女』 益田ミリ

益田ミリ、『お父さんという男』も読んだので
続けて読んでみた。
お父さんとは他人行儀なとこもよく描かれていたけど
お母さんとの距離はぐっと近い。
「母からメールがどんどん来るようになって嬉しい」と書く反面
いつか来なくなったときのことを考えると
というような先の心配をするとこなんて
少し泣ける。

私も楽しいとすぐにそれを失うことを考えてしまうから。
いつも同時に同率で持ってしまう。

>●『六つの手掛かり』 乾くるみ

乾くるみは男性作家で

「イニシエーション・ラブ」が特別面白かったので
それからあとも「リピート」とか読んだが
それはあまりピンと来なかったなあ。。。

で、この本はオムニバスになっていた。
東野圭吾の天下一のような。

林茶父という探偵が事件を解決するという。
風貌は太ったチャップリンでマジシャン。

それぞれの事件はよく練られていて
トリックなどに破綻は感じられないが
ややそれにまつわる人間の行動に強引なとこがあるというか
その動きに必然性があるのかは疑問…
その人のその個性だからと言われればそうかと
自分を納得させながら読むしかなかった。

茶父氏の謎解きも一見論理的だが
幾分レトリックの巧妙な人という印象だ。

まあ面白くは読めた。

最後の最後はウイットある…笑
posted by 彩賀ゆう at 00:48| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする